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CRAFTSMANSHIP

SAYAKA DAVIS × CITYSHOP Vegetable Dyed Shirt

Text&Edit: Eriko Azuma

ものづくりは、あらゆるものに宿る命の温度を繋いでいくこと。

時代を超えて育まれた美しいクラフトマンシップに焦点をあて、心動かされる「ものづくり」の背景を紐解きます。

今回はCITYSHOPとSAYAKA DAVISとのコラボレーションから生まれたベジタブルダイについて。公私ともに親交の深いCITYSHOPコンセプター片山久美子さんとデザイナーSayaka Tokitomo-Davisに、今季で第三弾となるベジタブルダイのアイテムにかける想いを伺いました。

ファッションと環境の調和を目指して。大切なことは続けていくこと

心躍る鮮やかなカラーの染料は、CITYSHOP のデリカテッセンで生まれた野菜くず。SAYAKA DAVISとCITYSHOPの共通する想いから、環境に配慮したスペシャルなコラボレーションが誕生したのは、コロナ禍の混乱が残る2020年の8月のこと。SAYAKA DAVISのアイコンとも言えるロングドレスに、廃棄される野菜から抽出した染料で鮮やかな色をのせたカラードレスは多くの女性たちの心を捉え、昨年も第二弾のカラードレスが発売された。そしてこの春、第三弾となるカラフルなドレスシャツが発売される。

Sayaka Tokitomo-Davis(以下Sayaka):ブランドのコンセプトでもある「Self-Nourishment」がこの企画のテーマ。「着ていただく方の心の栄養になるような洋服を作りたい」という想いが出発点です。CITYSHOPさんとSAYAKA DAVISの共通のビジョンとして、ファッションと環境との調和を目指しているのですが、この企画を続けていくことに意味があると思っているので、今年もお話をいただいて第三弾が実現できたことを、とてもうれしく思っています。

片山:コロナ禍を経て、自分たちが生み出すものに対しての責任ある取り組みを、できる範囲で続けていきたいという思いが強くなりました。始めることは簡単でも、継続していくことは難しい。この取り組みをCITYSHOPと同じフィロソフィーを持つSAYAKA DAVISと続けていくことは、ファッションの仕事を続けるにあたって大きな意味を持つことなので、今後も続けていきたいと思っています。

染料として使用されているのは、紫キャベツ、オニオン、紅芯大根、グレープフルーツ。

CITYSHOPのデリカテッセンで廃棄される不要な皮や芯の部分から色素を取り出し、無害な化学染料を加えて色を定着させる技術が、環境への配慮と鮮やかな色彩の両立を実現した。

片山: SAYAKA DAVISといえばドレスというイメージがあるので、第一弾、第二弾はドレスを作りました。今回は第三弾ということで、企画自体を前進させたくてCITYSHOPのキーアイテムでもあるシャツを提案させていただきました。CITYSHOPを表すキーワードのひとつに「WOMAN&GENTLEMAN」を掲げています。今までドレスで「WOMAN」を表現してきたので、その対比としてシャツで「GENTLEMAN」を表現したいという意図もありました。そして、個人的にSayakaさんのシャツスタイルが好きなんです(笑)。シーンや季節を問わずに着回していただけるアイテムなので、ワードローブの要としてずっとそばに置いていただけたらうれしいです。

Sayaka:すでにベジタブルダイのドレスをご購入いただいたお客様に新しい提案をしたいという想いもあり、カラーパレットも鮮やかに一新。CITYSHOPのイメージに合うカラーを提案させていただきました。片山さんからは当初SAYAKA DAVISらしい色をリクエストただいたのですが、インスタグラムで拝見しているスタッフさんたちの、ヘルシーでアクティブなイメージからインスピレーションをいただき、今回のカラーが生まれました。

片山:デリカテッセンでは季節に応じてメニューも変化しているので、必然的に廃棄される野菜くずの内容も変わってきます。今どんな野菜くずが出ているか、フードの担当者に事前にリサーチをし、そのリストとSayakaさんからいただいたカラーパレットを、染色をお願いしている研究所にお渡して染料となる野菜を決めていきました。

Sayaka:第一弾と第二弾は初夏に作ったのですが、今回は野菜のラインナップが春のものに変わっていて、今デリカテッセンで提供されている旬の野菜を使わせていただいてるんだなという実感がありました。環境に配慮した企画をベイクルーズさんとご一緒させていただけて本当にうれしいですし、日本の大手アパレルで、ファッションとフードという部署の垣根を超えたものづくりを実現されているのは本当に素晴らしいこと。片山さんとCITYSHOPの皆さんが、日本のアパレル界を一歩前進させてくださったように感じています。

片山:7年前に「ファッション、フード、カルチャー」が集まるコンセプチュアルなショップという形でCITYSHOPがオープンしました。今はフードが併設しているショップは5店舗中1店舗のみなのですが、形は変化しても、ただ物を売るだけではなく何かを発信し続けていくということを、CITYSHOPのアイデンティティとしてお伝えし続けていきたいと思っています。今回のコラボレーションのような取り組みは、私としても大きなやりがいを感じているので、そう言っていただけるのはうれしいです。

作り手から販売スタッフ、お客様へ。ものづくりの温度を繋げていく

片山:この企画は、2020年の春、コロナ禍で行われたSAKAYA DAVISの展示会で、Sayakaさんのものづくりへの姿勢やフィロソフィーに感銘を受け、それをお客様に知っていただきたい。という想いから始まったんです。

Sayaka:SAYAKA DAVISはこの春、おかげさまで10周年を迎えることができました。10年前と今では私自身も変化していますし、コロナの影響で社会も大きく変わりました。改めてブランドとしてのミッションを再考した時に出てきたのが「Self-Nourishment」というテーマ。洋服を通して女性が自分の美しさに気づいたり、なりたい女性像へと近づく後押しをできたらと願っています。

ブランドのコンセプトとして大切にしているのは「温度を繋ぐものづくり」。今回のコラボレーションでもオーガニックコットンを使用していますが、自然界からの恩恵である素材をどのように着る人の元に届けるか、常に試行錯誤しています。デザインやパターンの作成など、一つ一つの工程でできるだけ血の通った選択をすることで、ものづくりの温度を繋げていけたらと思っています。

片山:第一弾、第二弾の時も、ありがたいことにこの企画に賛同してくださるお客様がたくさんいて、服を纏うことでSAYAKA DAVISのエナジーに共鳴して下さっているのを感じました。コラボレーションの趣旨やSAYAKA DAVISのフィロソフィーを、スタッフ全員が熱意を持ってお客様にお伝えすることで、キャッチしてくださる方にきちんと届いているのを実感しています。SNSでの交流やインスタグラムのDMを通してたくさんの反響をいただくので、この企画を通して私までお客様からパワーをいただいているような感覚があり、それこそが、Sayakaさんがおっしゃっている「温度を繋ぐ」ということなのかなと。

Sayaka:SNSを通して、私もスタッフの皆さんやお客様と繋がっているのを感じています。どういう方がこの商品を買って下さっているのかが見えるからこそ、お客様のワードローブやTPOを思い浮かべて、今までのドレスとは少し違ったアプローチのシャツを作りたいと思いました。

女性の体を美しく包み込む、メンズライクな「女前シャツ」

第三弾となるベジタブルダイの新作は、オーバーサイズのドレスシャツ。グリーン(紫キャベツ)、ピンク(紅芯大根)、パープル(紫キャベツ)、レモンイエロー(グレープフルーツ)、ブラック(オニオン)の5色展開で、ボタンでアレンジが楽しめるゆったりしたスリーブ、サイドスリットなど、随所にこだわりが詰まっている。

Sayaka:元々メンズライクなアイテムを女性らしく着るスタイルが好きなのですが、ただ大きいだけではなく、着た時に女性の体が美しく見えるパターンにこだわりました。片山さんとの打ち合わせの中で「女前」というキーワードが出てきて、スリーブをボタンで開閉して、肌見せの分量を調節できるデザインが生まれました。首が詰まらずきれいに襟が立つようにしたり、ボトムのポケットに手を入れられるようにサイドスリットを深く入れたりと、細かなディテールにこだわって「女前」に着られる仕様にしています。

片山:そのまま着ても、ジャケットのように羽織っても素敵。袖のボタンを外してケープのように着たり、袖に手を入れずにビスチェのように着たりと、着こなしのアイディアが広がるアイテムです。グリーンとイエローは2023春夏コレクションのSAYAKA DAVISのキーカラー。コレクションを拝見した時すごく素敵で、明るくてハッピーな気持ちになったのでこの2色を軸にCITYSHOPらしい色を足していただきました。サンプルがあがった時点で、スタッフのみんなと「ねえ何色にする?」って大盛り上がり(笑)。どの色も素敵で迷ってしまいますよね。

Sayaka:色を気に入ってご購入いただいたお客様にその色を長く楽しんでいただきたいですし、色落ちを気にせずに自宅で気軽にお手入れをしていただきたい。なので野菜くずから抽出した天然の染料に、環境に害のない化学染料を加えたハイブリッドの染色法を選択しています。今回のシャツもより多くの方に着ていただきたいですし、ベイタブルダイならではのカラーと、その背景のストーリーも楽しんでいただけたらうれしいです。

片山:この企画も三回目となりましたが、私自身のパーソナルな人生と共に進んできた感覚があるんです。2020年にローンチした時は妊娠中で、昨年の第二弾では出産を経て仕事に復帰した直後。今年の第三弾では母として働く女性としての両立を頑張っていて…。それぞれ異なるステージにいるのですが、ものづくりで大切にしている信念は変わっていないということを実感する節目となりました。この企画を続けていくことで、お客様にもその時々の変化や思い出とともに、毎年増えていくコレクションを長く楽しんでいただきたいと思っています。